11.
かおる子はもういなかった。
かわりに、そこに母さんがすわっていた。
泣きつかれて、眠っていた。
ひざにしっかりと、手のりひつじを抱えて。
ぼくは母さんのとなりにこしかけた。
手のりひつじは母さんの手をぬけだし、ぼくのひざの上にすわった。
みんな夢をみている。
ぼくだってそうなのかもしれない。
たしかなことはわからない。
ぼくは母さんの肩に頭をもたせかけ、そっとささやいた。
「ただいま」