in the morning
朝おきると、やわらかな風が吹いていました。さらさらと流れる水は暖かそうです。水晶時計がきれいな音で時を刻む中、ふわり、と誘う声が聞こえました。どこへいこうか、どこへいきたい? 

my universe
大きな蝶のつがいが、出迎えてくれました。水面から上がったそこは、もっと広い水面の上でした。水硝子がゆるやかに回っています。はためいているのは細かな氷の結晶で織ったカーテンでした。何もかもがあたらしく見えました。
手を伸ばしても、蔓は遠くて届きそうにありません。いっしょうけんめいのびをしている拍子に、ころりと落ちてしまいました。そこへするりと、細い指がのびてきました。

wait for
水硝子の月が、うかんでいました。「ずいぶんおそかったねぇ」と彼はいいました。ごめんよ、と返したつもりが、さわさわと鳴る幾重もの葉に、かき消されてしまいました。
「もうしばらく待っていようよ」小さな星が、かすかに、音を鳴らしていました。そのひめやかな音に耳を傾けながら、ぼんやりと、暖かい色のそらを、ながめていました。

with you
水面から、鳥たちが生まれてきています。あかるい波紋をそこかしこにのこしながら、一羽、また一羽、と飛び立っていきます。そこへ、ひときわ明るい白が見えたかと思うと、おおきなとりがゆっくりと、浮かび上がってきました。
「いくよ」ふたりして、そのおおきな鳥の背にのりました。のってみるとそこは見えていたよりずっとひろく、羽根はちいさな硝子玉がたくさんついたように、いろいろな色に見えました。まるで虹をみているようでした。

blanco
空のずっと上のほうでは、空気がまるで水のようでした。手足を動かせば、泳いであちらまでいけるのです。さかなのような蝶が、あちらこちらと泳ぎ回っています。いろとりどりの硝子細工のような泡がただよっています。
「あっち」と彼は指差しました。その方向、幾重もの空気の層の先、ひときわ明るい光が、見えました。こちらに呼びかける声は、何かを待ち望むようです。「いこうよ」ふたり手をとって、ひかりの方へ泳ぎだしました。もうすこしです。


【おわり】


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